フェルメールの空とウクライナの旗
去年の春ごろだったか、花壇を掃除していたら年配のご夫婦に声を掛けられた。
ギボウシの花を指さして何かを言っている。花の名前が知りたいのだと思い、「ホスタと言います。葉も大きくてキレイですよね」と英語でお答えした。が、通じていない様子。
そもそもオランダ語ではないし英語でもない。聞き覚えのない言葉を話された。旦那さんは瞳がグレーで肌の色がロウソクのような白い色。オランダでは見かけない雰囲気。
言葉がどこかポーランド語のようにも聞こえたので「私は日本人です。あなたはポーランドの方ですか?」と尋ねると、違うと首を振られる。そして「キーウ、キーウ」と言われた。
そう、ウクライナから避難されて来た方たちだった。
2019年11月。
武漢で新型のウイルスが発生する1か月ほど前だが、園芸関連の展示会でロシア人の男性と知り合った。私が取り扱う花に興味を持っているようなので声を掛けたが、聞こえているのか、いないのか、ハッキリした反応がない。ただ、声を掛けて欲しいのだとは判り、いろいろと質問をした。
「ロシアで花屋をやっているのですか?」
「ロシアではどんな花が人気ですか?」
「ロシアでは花屋は儲かりますか?」などなど。
年は40歳になっていないかな?もしかすると30代前半か?
一方的に質問をしていたら、「ロシアでは日本のアニメが人気だよ」と返事をしてくれた。若い人の中には日本に興味を持っている人が多い事、アメリカよりも身近な国に感じている事なども教えてくれた。
それからは、徴兵制はあるのか?とか、税金は安いのか?とか、ロシアの格闘技のサンボに興味があるがあなたは出来るのか?とか、実はまだ日本には忍者がいるが知っているか?などなど。適当な事も言いながら、楽しく大笑いして話が出来る様になった。
そこで、とっておきの質問をしてみた。
「政府の悪口を言うと、ソ連時代の様に警察に捕まることはあるの?」と聞いてみた。「スパイもやっぱりいるんでしょ?」とも。彼は「今はほとんど捕まることはないよ」と言ってニヤリとした。「ロシアはね、君たちが思っているより悪い国ではないんだよ」とも付け加えた。
彼とは友達になれそうな気がした。
近所にウクライナ ナンバーの車が停まっている。
以前ほどではないが、ウクライナの旗を掲げている家がまだ何軒かある。
フェルメールがデルフトで描いた空の様だと思い、上の写真を撮影した。
そこにも、ウクライナの旗が写っている。
テレビで映る戦争は現実であり、割と近くにある。