ゴッホの庭仕事

植物の事、宝物の事、オランダの事などのメモ帳です。

サボテンがいる古本屋

朝はフロントガラスが凍り付くので、車を動かすまでに時間が掛かるようになった。
もう、オランダは冬。街歩きをするには耳が隠れる暖かい帽子とマフラー、手袋がないと厳しい。シトシトと雨が降ったりやんだり。それでも傘を差す人は少ない。

ライデンで古本屋を見つけた。古本屋にしては大きく、新刊本も売っている本屋兼古本屋かな。この古本屋さんがイカシテいた。本棚の所々にサボテンが飾ってあった。と言うか、サボテンがいた。

 

触るとトゲが刺さるのは間違いない。でも、どこか本とマッチしているし、
「すみません、あなたに寄りかかっている本、読まさせてもらいますよ」と声を掛けたくなる存在だった。

 

オランダの人口は、東京都民よりも少し多い程度。オランダ語を話し、読み書きする人はオランダの他にベルギー、スリナムにいるが2300万人と言われている。これは、オランダ語の本を出版しても最大で2300万人にしか読んでもらえないという事。だから、オランダの出版業界は日本や英語圏の国に比べると規模が小さい。特に専門書となると読む人が更に少なくなるので、大学生は英語の本で勉強をする。まあ、これは日本でも同じか。

 

ライデンはオランダ最古の大学がある学問の街だ。そこにある古本屋だから、英語の古本が山のようにあってワクワクする。建築の本、アートの本、デザインの本、古い写真集。画家のファン・ゴッホが好きだが、ゴッホの自筆の手紙だけを収録した全2巻の大型本は買うかどうか本当に迷った。

 

日本のくずし文字を解読する「みを」と言うアプリを使わせてもらっている。これと同じ様に、手書きのオランダ語スマホをかざすだけで翻訳するアプリを誰か作ってくれないだろうか?それがあればゴッホの手紙が読めるのに。

 

ちなみに「みを」を開発してくださったのはタイ人の研究者の方。オランダの古本屋で浮世絵などがあると「みを」を使って何が書いてあるか読んでいる。タイの女性が作ったアプリを使い、オランダで、日本の古い読めない日本語を読んでいるなんて、不思議な気分になる。誰かにこの事実を伝えたいけれど、どれほど凄い事なのか、オランダ人には判りずらいだろうな。

朝、ピーナッツバターとジャムのサンドイッチを紅茶で流し込んだだけで、夕方まで何も食べずに古本屋で宝探しをしていた。お腹が減っていたが、心はお腹いっぱいで大満足な一日だった。